直近の哲カフェで話したこと


「絶望の距離と〈社会〉の立ち上がり――土井隆義『「宿命』を生きる若者たち』を読む

報告:米田祐介さん&横山道史さん(ともに哲学カフェ横浜世話人)

日時:2021年12月26日(日)13:00~16:30

私たちはいま、たえざる永遠の昨日を生きているのだろうか。新しい中世、再魔術化、再埋め込み、そして親ガチャと無理ゲー社会。こうした感度はとりわけ若者において研ぎ澄まされている。この〈わたし〉の人生の動かせる部分は限りなく少ない。努力の条件は同じか。もう、未来には期待しない。それは固定化されたものだから。だが、その動かしえない未来は、いまの満足度と存在論的安心を相対的に約束する。グローバル化がもたらす流動化はむしろ固定化をもたらした。けれどもそう、決して、格差と幸福度は相関しない。絶望の国の幸福な若者たちと嘯く声がきこえてくる。だとしたら、このニッポンの閉塞に裂け目を入れることは不可能なのか。否、Z世代の感度に注意しよう。Adoの「うっせぇわ」に共振するその感度は健全そのものだ。「くせぇ、口塞げや限界です」。大いなる「拒絶」。その「拒絶」は希望の光そのものであると同時に、しかし拒絶は拒絶であるがゆえに、かなしいかな〈社会〉が立ち上がらない。かつて、尾崎豊は「反抗」を歌った。反抗とは社会を前提する。社会の立ち上がりを信じていなければ反抗の身振りはなしえない。ロスジェネ世代の赤木智弘の叫びもまた、それでも、〈社会〉の立ち上がりを信じていた、と信じたい。

 

本報告では『「宿命』を生きる若者たち』の読解を通じて、ロスジェネ世代とZ世代の絶望の距離、その深みの検討を通じて、みなさんと〈社会〉の立ち上がりについて語りあいたい。

「安楽死を考える―京都ALS患者の事例を中心として―」

報告者;小館貴幸さん(立正大学・明治大学非常勤講師 介護福祉士)

四月の哲学カフェで議論した「反出生主義」をめぐる議論の中で、参加者が「生まれてくることは選べなかったけど、死ぬときは自分の納得する終わり方をしたい」という叫びから今回のテーマの「安楽死」について深く考えてみることにしました。

なお、参加希望者には、『在宅と難病ケア』の安楽死特集号の小館さんの論文をお送りします。

日時;2021年10月31日(日曜日)午後1時~4時


「Google&Amazonに頭の中を覗き込まれる現状にどう抗ったらよいのか」

Googleを使って著者名から最新刊の著作のタイトルを検索し、Amazonで取り寄せようとスマホをいじっていると、「この本をお求めになった方はこんな本も購入されています」とおせっかいな案内が表示される。頭の中を覗き込まれているような気持ち悪さを感じながらも、ついポチってしまうなんてことも。半年前、マイナンバーカードを作れという案内が個別送付され、この九月、統括するデジタル庁が発足した。私たちはこのような動きにどう抗っていったら良いのか、富山大学元教員でJCANet理事の小倉利丸さんに解説していただきます。

日時;2021年9月19日(日曜日)午後1時~4時

今まで、こんなテーマで語り合ってきました。

  日時 チューター テーマ
第1回 2015/8/22 草島 豊 模擬哲学カフェ「居場所」
川井 悠一郎 現代社会の定時制 若者の「居場所」
第2回 2015/9/19 丹波 博紀 「石牟礼道子」論――愛について
第3回 2015/10/10 小舘 貴幸 尊厳死・安楽死問題をめぐって 相模原事件から
第4回 2015/11/21 本永 惠子 女性・表現者と「傷」or会田誠展をめぐる表現・表象のポリティック
第5回 2015/12/12 荒井 康行 精神福祉の最前線  オープンダイアローグ・アブローチへの関心から
第6回 2016/1/23 荒 伸直 自由放任の優生思想
第7回 2016/2/13 松島 紀子 「不妊の語り」に映し出される女性の意識の変わらなさ
第8回 2016/3/26 大橋 由香子 「女(わたし)のからだから、3.11、フクシマを考える 5度目の春に」
第9回 2016/4/30 丹波 博紀 シールズ女子の政治性  Personal is Political
山崎 公江 この20年余の日本社会の変貌  社会民主党の衰退と市民運動
第10回 2016/6/5 山崎・樋浦・金井 「この子、は沖縄だ!」沖縄スタディ・ツアー報告
樋浦 敬子 教科書の中の沖縄、基地の中の沖縄  育鵬社版教科書クリテーク
山崎 公江 沖縄で起きた米兵による女性への性犯罪と、私たちは当事者であることの意味
金井 淑子 なぜいま、「沖縄・オキナワ」なのか?
第11回 2016/7/2 樋浦 敬子 育鵬社教科書と安倍政権
第12回 2016/8/6 櫻井 均    テレビは天皇制をどう描いたか
第13回 2016/8/27 櫻井 均 シネマ・カフェ  櫻井氏編集映像視聴、
昭和への道、国体護持と天皇制、慰安婦問題関連
第14回 2016/9/10 櫻井 均 「私のメディア論」―― NKK時代、プロデューサー・ディレクターとして、作品・モノの作り手として、表現者として、何に対してどのように責任を取るのか?
第15回 2016/10/3   相模原事件~津久井「やまゆり園」施設事件をめぐって
第16回 2016/11/7 鶴田 雅英 相模原事件をめぐって Part2
第17回 2016/12/12 米田 祐介 相模原事件をめぐって Part3
田坂 和実 「私のプロジェクト」映像作品視聴
第18回 2017/1/15 西村 京子 死の旅立ちへの「助産」~医療の枠を超えた「看取り」の文化土壌を育むために
第19回 2017/2/12 鈴木 美和子 悩める女たちと三十余年~いろいろ見えてくる女のミニコミ『マイマイ族』を編集発行して
第20回 2017/3/12 ゆのまえ 知子 3.11東日本大震災・フクシマ6度目の春に
第21回 2017/4/12 シネマカフェ クロード・ランズマンの映画『ショア―』一挙上映視聴
第22回 2017/5/15 金井 淑子 哲学カフェ横浜は、どこに行こうとしているのか?
第23回 2017/6/12 樋浦 敬子 他 道徳の「教科教育化」で何が進行しているのか?
第24回 2017/6/19 小野 美智子 小野美智子さんの新作を読み批評する会「樹に添う」帆森みちる